はじまりは突然に
今回のコラムは釣りとは直接には関係してません。ただ、私は異文化に関心があって、それゆえにルアーフィッシングを嗜好し、また、アブガルシアに惹かれる理由だとも思うので、潜在的には関係した事柄です。
そこで唐突に話題を始めますが、皆さんは《Pake》って知ってますか?
丈夫でハイセンスな日本製のジッパーバッグのブランドです。
私はガルプ! を保存するジッパーバッグを自分でスタイリングして遊んでいるので、《Pake》を使ってみたいなと思ったんです。
《Pake》を知るきっかけになったのは、老舗アウトドアブログの《BEST BUY GEAR》で取り上げられていたから。
《BEST BUY GEAR》は大好きなブログで黎明期から読んでます。
それで、この記事には《Pake》の公式ページの紹介文を引用して、以下のように反応しているんです。
「全く意味がわからない!!」
これが本当にその通りで、私も公式ページで読んでみたんですが、全く意味がわからないんですよ。
だけど、30年来のインターネット民である私の勘が「これは機械翻訳的なアレだぞ」と言ってる。たぶん本当に伝えたいことを上手く書けてないだけ。日本製のジッパーバッグ屋さんのはずなのにソレも変な話なんだけど、きっと見立ては間違いないはず。
それでページを見渡してみたら、英語版に切り替えできることを発見。これで解決。
..と思ったら英語も変。なんだコレ..
第3の言語の影
とにかくまずは読んでみてほしいです。
Pakeとは
私たちのプロジェクトは、移住の物語です。
控えめな始まりの側にあるそのコンセプトは習慣と品質にあります。
デザインは時間と空間の境界を超えます。
それは私たちのPakeを国際的な試みにしているものの証です。
標準は飽和傾向を分かりやすく説明しますが、Pakeは共通の時代- 合法性に先行する創造性の時代 – の前にやって来ました。
それは古い日常のイメージで基本を再定義します。
純粋な真実は私たちの生活と持つバッグの古い共通イメージを避けているという事です。
これがブランドのコンセプトです。10回くらい読み直したんですが、わからない。《HUNTER×HUNTER》に出てくる「天使の自動筆記(ラブリーゴーストライター)」が書いた文章みたいな難解さです。俄然、やる気が湧いてきます。
そして次が、英語版の文章。
About Pake
Our project is a tale of transmigration.
Apart from modest beginnings,its roots are in custom and quality.
The craft of design transcends the boundaries of time and space.
It is a true embodiment of what makes our Pake an international endeavor.
While norms demystify saturated trends, Pake arrives before the common era – an epoch of creativity preceding lawfulness.
It redefines the basic with the classic everyday image.
The unadulterated truth shuns the outmoded commonalities of how we live and the bags we carry.
コレ初見では、英語を読めても意味がわからないと思います。
しかし、よく読んでみるとヒントを見つけることができました。
- 控えめな始まりの側にあるそのコンセプトは習慣と品質にあります。
- Apart from modest beginnings,its roots are in custom and quality.
以上の2文は対応しているんですが、和文では「コンセプト」と表現している箇所が、英文では「roots」となっています。ここは和英翻訳なら語句が一致しそうなものですが、異なっているということは別の第3の言語から日本語訳と英訳をそれぞれ導き出したのではないか?という仮説が生まれてきます。
それで改めて考えながら英文を読んでみると、重要な単語が使われていることに気がつきました。
- 私たちのプロジェクトは、移住の物語です。
- Our project is a tale of transmigration.
原文は単語を小文字で始めているからスルーしてしまったんですが、おそらく正しくは大文字で始めて「Transmigration」だと思います。これは宗教用語なので極めて限定された意味を持っています。ヒンドゥー教や仏教における主要な概念であり、日本語では「輪廻」と言います。「輪廻転生」のほうが聞き覚えがあるかもしれません。
このことは「異世界転生」なんていう類型でも知られている通り、私たちにも馴染みのある概念です。ちなみに「転生」とは死後に魂が他人の肉体に宿ることを指し、「輪廻」は他の動植物に生まれ変わることを指します。つまり、《転生したらスライムだった件》は、転生というより輪廻のほうです。どうでもいいですが。
このようにして文章を紐解いていくことは異文化を理解する助けになります。たぶん真の原文は、中国やインド、東南アジアの言語で書かれたものだったのではないかと思います。商品は日本製なのに?って疑問は残りますが、この際それはいいことにしましょう。
新訳「Pakeとは」
そんなわけで翻訳の過程はすっ飛ばして(それはもう楽しい時間で、私にとって最高の気晴らしです)、私が勝手に翻訳した内容を綴っておこうと思います。《Pake》が言いたいのは、きっとこういうことのはず。
Pakeとは
私たちのプロジェクトは、『輪廻の物語』だと言えます。
時を遡って誕生の瞬間を見れば、その根底に事象の普遍性と絶対的な基準を見つけられます。
創造の御業(みわざ)は時間と空間を超えた神秘的なものとして存在しているのです。
私たちはプロジェクト『Pake』を通じて、このことを世界に体現したいと思っています。
すでに世の中に満ちているモノを解き明かしていく科学的手法とは違って、私たちは起源へと遡って考えます。何も明文化されていない太古の時代にあった、真の創造性を大切にするのです。
これは日常を再定義することになるでしょう。
さあ、新しいバッグを持って、古い価値観を捨て去りましょう。
..どうでしょう? だいぶわかる感じになったかな。言葉選びから感じる詩的なテイストは保ちたかったので、説明するにしてもこのくらいの加減がいいかなと。
おわりに
日本のルアーフィッシングは、主に英語圏から輸入されてきた文化・概念です。その過程では語句の意味だけを辞書で訳したような伝達も多くあって、残念ながら誤解も散見されます。「キャッチ アンド リリース」は誤解の代表格じゃないかと思います。
釣りを文化的に醸成していけるような記事も時々は発信していきたい所存。
ま、文化の翻訳って楽しい作業ですからね!


