なぜアジングをするのか

2026年はアジングを頑張りたい、けれど..

ピュア・フィッシング・ジャパンの白龍さんから聞いたところによると、「アジを制する者は新潟を制す」というフレーズがあるのだそうで、私は新潟に居ながらにして初耳でしたが(笑)、しかしながら納得もできるのでした。

それで、2026年はサーフゲームの合間の釣りには積極的にアジングを取り入れてみようと思い立ちました。

ただ、私の思い込みとして、「アジングは東京の釣り」というイメージを持っていました。公共交通機関を利用する都会の社会人アングラーにとって、仕事帰りに嗜む釣りとしてシーバスなどは道具の仕立てが大掛かりです。ちょっと海を感じてから帰宅したい人たちに受け入れられたのがアジングという釣りなのだろうと思っていました。

一方で、ここ新潟は車社会です。私も日頃から自家用車を利用していますから、あえて小さな仕立ての道具を選ぶ必要はありません。だけど、アジングを本気でやってみたい。そのためにはモチベーションの源というか、ロマンが必要でした。

ここで私のロマンというのは大物を釣ることではなくて、歴史に関するロマンです。アジングという釣りがなぜ始まったのかを知ることは、非常に重要な事柄に思えました。

アジングという呼び名は2002年頃から

世にアジングという名称を広めたのは、アジングの名手として知られる渡邉長士さんであるというのが通説です。

つりそくに掲載されている取材記事によれば、渡邉さんがアジをルアーで釣るきっかけとなった出来事は1996年頃に始まったとされ、その後の2002年に発行された雑誌への寄稿の中で「アジング」という名称を提起されています。

しかし、この記事の後編を読むとアジングの普及は一本道ではなかったことも窺い知ることができます。

当時、関東では「アジならサビキで釣れる」ということで、わざわざルアーで1匹ずつ釣ることに賛同は得られなかったようです。ところが、2008年頃から、西日本発祥のアジングブームが関東にも到来することになります。

渡邉さんは1981年生まれの千葉県出身・在住のアングラーですから、これは西日本に詳しい人の見解を尋ねてみる必要がありそうでした。

アジングの発祥は広島県?

西日本のライトゲームを牽引してきた武田栄さんの語りは貴重です。武田さんは1967年生まれの大阪府のアングラーということで、渡邉さんよりも早い時期である1993年にはライトゲームを始めていたとされます。

OWNERコラム「タケダさんの爽快なる釣りの世界!」第3話【ルアーのメバル釣り】

私が注目したのは次の箇所です。

ライトゲームではチヌが、そして今や大人気のアジ(アジング)がにわかに注目され始めます。チヌは浜松(浜名湖)と広島から、アジは同じく広島そしてボートでは静岡や千葉あたりから始まったと認識してますがどちらもその直後には関西にも伝わり僕もチヌやアジのタックルや釣り方の開発に挑みます。

県名で言えば、広島県、静岡県、千葉県の3つです。渡邉さんは千葉のアングラーでしたから、この符合は何かありそうです。

それですぐにピンときたのが、都道府県の漁業調整規則のことです。

アジングは「まき餌釣の禁止」で広まった

先ほどの3つの県は、漁業調整規則により釣りに制約がある県です。

  • 広島県:照明禁止、船舶からのまき餌釣禁止
  • 静岡県:から釣禁止
  • 千葉県:照明禁止、まき餌釣禁止区域あり

以上は直近の規則です。そこで2000年頃の規則についても調べてみたところ、社団法人全日本釣り団体協議会が2004年に公表した報告がありました。

(社)全日本釣り団体協議会で把握している海区漁業調整規則改正のうち まき餌釣りに関する現状 – 平成16年4月20日現在

当時、まき餌釣を禁止していなかったのは12府県。山形、福島、神奈川、大阪、鳥取、島根、山口、福岡、熊本、大分、宮崎、鹿児島です。

それ以外の都府県では、禁止解除したばかりの地域もあれば、解除は困難としている地域もあり、当時は大きな問題であったことがわかります。

ちなみにこの時の東京都は対応を未定としていましたが、その後にまき餌釣を禁止しており、2024年に制限付きで解除されたのは記憶に新しいニュースです。

東京都でまき餌(コマセ)使う釣りが解禁【2024年11月15日〜】 理由と新ルールを徹底解説

まき餌釣が禁止されている地域では、コマセをカゴへ入れたり、直接に海へ撒いたりできません。また、水中で溶解するダンゴも使えません。

すると実質的にサビキ釣りができないので、アジを釣るために他の方法が試されることになるのは自然な流れであると感じます。

一例で、トリックサビキがあります。トリックサビキは釣り針にコマセを付けるサビキ仕掛けなので、カゴを使用しなければ「まき餌釣」には該当せず、「つけ餌釣」となります。

この「トリック」を世に送り出したのは兵庫県にある株式会社まるふじです。2008年には姉妹品が登場していた記録がありますので、初代の「トリック」はこの問題の最中に考案されていただろうと想像します。兵庫県は陸釣りのまき餌釣は禁止解除しましたが、現在も船舶からのまき餌釣は禁止している地域です。

ただ、トリックサビキはまき餌釣に誤認されやすいからなのか、結果としては、まき餌釣を禁止していない都府県で受け入れられることとなったようです。

つまり、誰の目にも誤認されないことが大切な要素だったのかもしれません。そう考えると、アジングがジグサビキを用いないことにも合点がいきます。サビキを使用する以上は常にまき餌釣の疑いがかかるからです。

その点、シングルフックのジグ単を操るロッドは短いものでよく、サビキのための長いロッドとは遠目でも区別がつきやすいので疑念の目を避けられたことでしょう。

また、メバルでなくアジというところも、あえて市場価値の高くない魚を釣ることで漁業者との摩擦を和らげることにつながっていたのかもしれません。

新潟には、新潟のアジングを

現在の新潟市に心を戻してきまして。

いつの時代も、その時を生きた人が置かれた状況があり、工夫があり、様々な釣法が編み出されるのかなと思います。

新潟の、私の場合は新潟市の..ですが、今の環境と状況に合ったアジングを模索したいと思いました。

次の1年が楽しみです!