レビューの概要
この記事はアブガルシアのサーフベイトロッドであるXSFC-1032Mの長期使用レビューです。私はスピニングモデルのXSFS-1082Mのユーザーでもあるのでスピニングとベイトの比較も交えつつお伝えしようと思います。
手っ取り早く概要を知りたい人のためにお伝えすると、XSFS-1082Mはキャスト時のスイートスポットが広く、ルアーウェイトが変化しても軽快に扱うことができるサーフベイトロッドです。また、組み合わせるベイトリールの重量に対しても対応範囲に余裕があるため、これからサーフでベイトタックルを使用してみたいアングラーにおすすめしやすいです。グリップが短めであるため左右の持ち替えがしやすく、取り回しに優れたロングベイトロッドを探しているアングラーにも向いていると思います。
入手の動機
「アブガルシアが好きだから!」と言うと身も蓋もなくなってしまうのでブランドについては置いておくことにして… 私の場合はスピニングモデルのサーフスレイヤーXSFS-1082Mのユーザーでありながら「なぜベイトモデルにまで手を伸ばしたの?」という点でお話しできることがあります。
理由は疲労と筋肉痛の軽減のためです。7ftくらいのタックルでは感じないことですが、10ftで30g~40gのルアーを繰り返し遠投するサーフゲームでは身体に痛みが出てきます。いつも同じ場所に痛みが出るのでフォームやスタンスに原因があることは明白でした。
そこで右投げ右巻きのベイトタックルであれば、キャストのたびにタックルを支持する腕が入れ替わるということと、スタンスも左右でスイッチするので全身の筋肉を満遍なく使うことになり、運動的な負荷を分散できると考えました。このように負荷を1箇所に担わせないようにする方法は登山やトライアスロンからヒントを得たものです。
なお、この狙いを達成する過程において右投げ左巻きも試しましたが、やはり多少の痛みが出ました。それでもスピニング使用時よりも幾分かマシです。たぶん、ベイトの場合は左右の手の位置が近くなり均衡が保ちやすいから身体への負担が少ないのだと思います。
ハードワーク後の身体の痛みにお困りのアングラーならば右投げ右巻きのベイトタックルを試してみる価値は充分にあると思います。

スペック
さて、まずは基本情報の確認です。下表はベイトタックルを使ってみたいアングラーの参考のためにスピニングモデルのサーフスレイヤーの情報と並べてあります。
| 製品名 | XSFC-1032M | XSFS-1082M |
| タイプ | BC | SP |
| 継数 | 2 | 2 |
| 全長(ft) | 10’3″ | 10’8″ |
| 全長(cm) | 312.4 | 325.1 |
| 標準自重(g) | 178 | 188 |
| 仕舞寸法(cm) | 160.2 | 166.5 |
| 先径(mm) | 1.95 | 2 |
| ルアー(g) | 7 – 50 | 8 – 50 |
| Bestルアー(g) | 40 | 40 |
| PE Line(号) | 0.8 – 2.5 | 0.8 – 2 |
| リーダー(lb) | Max 40 | Max 40 |
| パワー | M | M |
| アクション | RF | F |
| 価格(税抜) | ¥34,000 | ¥34,000 |
入手前にスペックを読み比べた限りではスピニングモデルと似ているのかなと思っていましたが、実際に使用してみると全く異なるロッドでした。XSFC-1032Mは、スピニングロッドのガイドやリールシートをベイトリール用に付け替えたかのような「なんちゃってベイトモデル」ではありません。ベイトタックルならではの特性を発揮できるように設計されていると感じます。
気に入っている点(長所)
メリットとデメリットは裏返しということもあるので、私が気に入っている点をお伝えしたいと思います。
多接点ガイドセッティング
アブガルシアと言えば小口径・多接点ガイドセッティングのロッドをリリースするメーカーとして知られています。ベイトロッドの場合にはロングリーダーの使用を考慮して(スピニングモデルよりも)口径の大きなガイドを採用する傾向にあります。下表に示すとおり、XSFC-1032Mも他社のロングベイトロッドと比べるとガイド数が多いです。
| 製品名 | XSFC-1032M | NESSA XR B104M+ | MSB-1052-TR |
| ガイド数 | 14個 | 12個 | 10個 |
多接点ガイドのロッドは操作時のダイレクト感、トルク感、レスポンスの良さが際立ちます。ガイドが多くなるほど(それと口径が小さくなるほど)ラインがラジアル方向に移動する余地がなくなり、ブランクスとラインとの間で力の伝達が確実になるからだろうと思います。スポーツ的に言うならば道具と身体との一体感が生まれるので、操作していて楽しいロッドになります。
グリップが短い
スペックに記載がないので入手するまで気づきませんでしたが、10ft台のロングロッドとしてはグリップが極めて短いです。
| 製品名 | XSFC-1032M | NESSA XR B104M+ | MSB-1052-TR |
| グリップ長 *1 | 36cm | – | 38.5cm |
| リールシート位置 *2 | 372mm | 426mm | – |
グリップエンドを脇に挟むことを想定しているロングロッドは、グリップの長さが42cmくらいに設定される傾向があります。しかし、ベイトタックルをそのポジションで支持するとリールを巻く手を(スピニングよりも)高く挙げなければならないため腕が窮屈に感じます。私としてはグリップエンドを肘にかけるか、(時にギンバルのようなものも利用して)腰に当てるほうが良いと思っています。特に腰に当てた場合にはジャークで疲れることがなくなり、スピニングでは真似のできないゲーム展開が可能となります。
また、ロッドの可動域が広がるのでキャストフォームの自由度が高く、ファイト中の咄嗟の動作も妨げられることが少ないです。フローティングベストとの干渉が減ることも嬉しいポイント。右投げ右巻きではロッドの持ち替えが生じるので特に恩恵を感じるところです。
適度に柔らかい
ブランクスの話になります。まずスピニングモデルのXSFS-1082Mよりも柔らかく感じます。これはテーパーの違いによるものと思います。スピニングのロングロッドはファストテーパーのモデルが多めですが、ベイトではレギュラーファストやレギュラーのモデルが見受けられます。XSFC-1032Mもレギュラーファストテーパーです。
XSFC-1032Mはアブガルシア独自のTAF製法を採用しているもののグレードとしては中級機なのでカーボン素材の弾性率については言及がなく、実際に使ってみても特別な感じはしません。しかし、だからこそ、とてもキャストしやすいロッドに仕上がっています。30g~40gのキャストに慣れている状態で20gへウェイトダウンしたとき、XSFS-1082Mだと投げ感が軽すぎてキャストを難しく感じることもあるのですが、XSFC-1032Mならしっかりとウェイトが乗った感覚を得られるので狙い通りのキャストができます。
また、ファイト時も力をいなすので安心感があります。激しい暴れでロッドの反発を感じるシーンで、XSFS-1082Mではスラックが出ないように強引に巻き取っていましたが、レギュラーテーパー寄りのXSFC-1032Mでは動きに追従して粘るのでリールを一定速度で巻き続けることができます。この時にジリジリと魚を引き寄せる感覚はベイトタックルならではのものだと思います。
ベイトロッド同士で比較した場合においても柔らかさがちょうどよいと感じます。高級ロッドは高弾性カーボンを使用したシャキッと硬いロッドが人気であり、そういうものを良いロッドとする意見に私も同調していましたが、XSFC-1032Mを使い込むうちに考えを改めることになりました。今では「中弾性+レギュラーテーパー」が釣りを最も楽しめる組み合わせだろうと思っています。

飛距離も十分
基本として30g~40g以上のウェイトを遠投する領域ではアングラーの筋力と技量によるところが大きいように思います。ただ、そうは言ってもタックルを変えた際の飛距離は気になるところ。ざっくりですが最大飛距離を計測しましたので参考としてお伝えします。
| 製品名 | XSFC-1032M *1 | XSFS-1082M *2 |
| PE2号+45g | 100m | 90m |
| PE0.8号+45g | 計測せず | 110m |
実釣では0.8号、1号、1.2号、1.5号も使ってきましたが、ベイトの場合は一目で飛距離に大差がないとわかるので計測していません。特筆すべきはPE2号のときの飛距離です。遠投を狙ったセッティングではコンスタントに100mを超えます。スピニングではどう頑張っても90mほどが限界だったので、この点はベイトタックルについて非常に満足しています。
一応、スピニングで0.8号にすれば110mまで届きます。ただし、キャストのたびにジグを後方に振り子して全身を使って投げた場合の飛距離です。対して、ベイトの時はピックアップからの流れでキャストしています。全身の重心移動は込めますが、身体に負担のある投げ方はしていません。
結局、実釣を想定するとベイトタックルで太糸を扱うことに軍配があがりました。ラインは太く強いほうが伸びにくいのでジグをアクションさせやすく、また、浮力が増加するからかシンペンを漂わせやすくなります。つまり、キビキビ動かすことも、ゆったりスローに誘うこともできるので、戦略の幅が広がります。ファイトや根掛かりにも強いですし、FGノットの結束がしやすいといった細かなメリットもたくさんあります。スピニングでは飛距離とスラックの問題で太糸を利用しにくいわけですが、ベイトなら飛距離に影響は少ない上に、ブレーキでスラックをコントロールできるのでネガティブ要素が全くないように感じます。
トータルのタックルバランスの話になってしまいましたが、改めて飛距離に関して言えば、実釣に十分な飛距離が出せていると思います。
軽量リールも合う
一般的にロングベイトロッドには38mm径のような大径スプールのベイトリールがマッチしていると言われています。そのようなリールは大型で重量も270gくらいあったりします。それに対応してロッドが設計されていると、リールは220g~270gくらいがちょうど良くて、それよりも軽いとバランスが悪くなったりします。
ところが、XSFC-1032Mは軽量リールとの相性が良いのでとても驚きました。150gのZENON LTXでさえ実用範囲に収まっていると感じます。さまざまな検討の末、私は195gのZENON BEAST 9を合わせることに落ち着きました。
すでに何らかの釣りでベイトリールを持っているのであれば、とりあえずXSFC-1032Mに載せてしまえば釣りができると思います。ロングベイトロッドに挑戦してみたいアングラーへ間口を広げてくれるロッドだと思います。
留意点(短所)
続けて、見方によってはデメリットになる点をお伝えします。
ティップのブレは価格相応
ブランクス性能に関して、ティップのブレの収束については可もなく不可もなく、普通の、価格相応という印象です。XSFS-1082Mと比べるとアクション(テーパー)が遅いということもあり、ブレの収束にも時間がかかります。これはスピニングのXSFS-1082Mではブレの収束が価格に対して優れている印象だったことからすれば残念に感じてしまう部分です。
それに加えてグリップの短さゆえに、力みが入ったときのキャストフォームの乱れが矯正されにくいです。そのような雑なキャストはティップのブレとして表れて、ルアーの飛行姿勢の乱れやバックラッシュにつながります。スピニングや、シャキッとした高級ベイトロッドだと(良くも悪くも)キャストフォームが甘くても投げることができてしまいます。そういったものに慣れた状態でXSFC-1032Mへ持ち替えると難しさを感じるかもしれません。

最先端素材は不採用
XSFC-1032Mは、T1100GやM40X、チタンフレーム、トルザイトリングといった最先端素材は採用されていません。つまり、先々にそういったものを採用した上位モデルが登場した時にXSFC-1032Mを手放して最新のロッドに買い替えたいという気持ちになるかもしれません。
先進的なテクノロジーで購買意欲を刺激することを揶揄して「テクノバブル」と呼びます。私もテクノバブルに弱い人種(新しいモノ好き)です。そうでない人にとって、この項目はデメリットにはなりません。
比較できる製品が少ない
留意点が2個だけというのも何なので強いて挙げるのですが、サーフベイトロッドはラインナップが少ないという問題があります。アブガルシアならばXSFC-1032Mだけです。
一応、ソルティステージプロトタイプにはライトショアジギングシリーズとシーバスシリーズにもロングベイトロッドがラインナップされているので、選択肢がないわけではありません。が、イメージ的にショアジギングは青物だし、シーバスは港湾フィールドのような気がするということで、サーフに最適なタックルを使っているという確信を得られるのはXSFC-1032Mだけなのです。
エサの投げ釣りでは体格に合わせてロッドを選ぶのが当たり前です。ルアーのスピニングでもまだその域にまで細分化されていないのでベイトとなれば尚のこと。XSFC-1032Mを使う以上は、タックルに自分を合わせる、使いこなす、という意識を求められると思います。
おわりに
この記事は2025年6月に下書きを済ませていたのですが、公開が11月になってしまいました。その間にアブのベイトリールは選択肢が増えています。ビースト300なんて面白そうです。
ベイトのロングキャストはタックルを総合的にまとめ上げていく楽しみがあります。ご自身のベストバランスを探す助けになればと思います。
