国内外のバス釣り観測ネタでございます。
まずは今江さんの連載から
アメリカのFFS規制
(前略)驚いたことに来季、エリートシリーズでは9戦中4戦でFFS装備が全面禁止というさらに厳しいFFS規制を決めた。(後略)
LureNewsR
記事中で今江さんは「規制に関しては反対派」と表明しています。だからなのか、この動向についてネガティブに考えている様子が言葉の端々から伝わってきます。
ただ、この件を「厳しい規制」と捉えているあたり、今江さんは立場も本質も見失ってしまっていると感じました。日本語の「規制」は「悪い物事を制限する」という文脈で使用します。今江さんは規制反対派と言いながらも、FFSは根本的には悪だと認識していることの表れだと思います。しかし一方で、B.A.S.S.の原文はそのような文脈では書かれていません。むしろ来季はとても面白くなりそうです。
B.A.S.S.の決定
B.A.S.S. announces Live Sonar rule change for 2026 Elite Series
かいつまんで要点をお伝えしながら解説します。
- 2025シーズンはFFSの影響を和らげるために多様なゲームを組んだ。
- そして各ゲームの勝者のうち半数近くは(FFSに依らない)伝統的な戦略で勝利した。
- しかし全体的にみるとFFSの影響は依然として大きい。
まず日本との違いとして、表彰台がFFS巧者で独占されるほどではないという点は注目です。今江さんが繰り返し伝えているような「表彰台=FFS巧者」はフィールド面積が小さい日本特有の現象なのかもしれません。アメリカから帰ってきた青木大介さんも述べていましたが、アメリカのフィールドはとにかく広いのでバスを見つけるまでが最初の関門であると言われています。ゲーム展開を通してFFSが強みを発揮する時間帯が日本よりも短くなることが影響を低減しているのではないかと思います。
- 2026シーズンは、9戦あるゲームのうち最大5戦がFFSを許可するゲームとなる。
- FFS可否の決め方は、2戦ずつをペアとしたコインフリップで決定する。
- 9戦目はペアがないので単独でコインフリップする。
- したがって最小で4戦・最大で5戦がFFSを許可するゲームとなる。
- FFSが禁止となったゲームは、その練習中もFFSは禁止である。
このコインフリップは9月4日のライブアナウンスで実施されたので、各ゲームのFFS可否は決定済みです。
B.A.S.S. announces results of coin flip determining 2026 forward-facing sonar events
- Lake Guntersville — Non-FFS
- Lake Martin — FFS
- Tennessee-Tombigbee Waterway — Non-FFS
- Arkansas River — FFS
- Lake Murray — FFS
- Santee Cooper Lakes — Non-FFS
- Pasquotank River/Albemarle Sound — FFS
- Lake Champlain — Non-FFS
- St. Lawrence River — FFS
ゲームの発表そのものをイベントに仕立てて関心を集めるあたり、さすがアメリカは運営上手だと感じるところです。
ルール変更の影響
一言で表現すると「より面白くなった」ということです。
FFS戦とNon-FFS戦が半々くらいになるようにルールが設計されたので、両方とも長けている選手のみが年間優勝を勝ち取るだろうと予想できます。
つまり、本当に強い選手がハッキリします。
しかもFFS戦とNon-FFS戦が「ほぼ」交互に行われるのがニクい演出です。シーズン中は抜きつ抜かれつのデッドヒートが予想されますが、コインフリップの不確定性によりFFS戦が連続する日程も生じており適度な起伏があります。選手も観客もスパイスの効いた体験になることでしょう。
今江さんはFFSは体力勝負なので若手有利と分析していますが、FFSが半数のゲームで制限されることによってベテランが復権するかというと、全くそんなことはないと私は予想します。なぜなら1年を通じてFFSの特訓に励んでみても、今後はゲームの半数でしか活きてこないことになるからです。それはNon-FFSに関しても同様です。プライベートの特訓の何割をFFSに費やすべきか、選手にとっては以前よりも決断が難しくなったのです。調整に失敗した選手は若手であろうがベテランであろうが沈むと思います。
2026シーズンの終わりには真のスーパースターが誕生しているかもしれません。そうなればメーカーはスター獲得のためにスポンサー料の一極化の道へと進むかもしれません。選手にとって、凡庸な成績で終えたならこれまで以上に咎められますが、勝ちさえすれば絶対の栄光が迎えてくれることでしょう。
ひとまずのおわりに
実のところ、各ゲームごとにルールが変化するという工夫はヨーロッパの競技フィッシングでは見つけることができるものです。ソナーの有無のみならず、異なる釣種を組み合わせる例もあります。まるでトライアスロンさながらです。
また、そもそもの話として、ゲームのルールというのはプレイヤーを振るい落とすためにあります。常人には完璧にこなすことが不可能な課題を与えてこそのゲームなのです。そしてゲームの進行下では全てのプレイヤーが同じ影響を受けるのですからルールに不満を持ってはいけないのです。もしそうなってしまったら、もうゲームに向いていない人ということになります。
私は今江さんのファンでありつつも、一連の述懐に違和感を覚えたのはここが原因です。プレイヤーとしてのキャリアが長いからこそ、一選手の発言として留めるには無理がありました。まあ、それさえ今江節というか、年長者の処世術のようにも感じていますが..
今回の件は、反対などと言っている場合ではなくて、むしろフィールドが狭い日本こそ先んじてツールの制限を導入すべきだったと思います。それはFFSに始まった話ではなく、各種ソナーやGPSに至るまで全てのツールについての制限です。他を見れば、登山ではGPSは必須の安全装備ですが、山岳オリエンテーリング競技ではコンパスと地図でルートを決定します。GPSの使用はリタイアを意味します。釣りのソナーだって1日に合計1時間のみ使えるように制限するとか、ゲーム性を高めるためにいくらでもルールを考えることはできます。
制限があるからこそ、そのゲームの優勝者はスゴイでしょう? スゴイ人の意見ならみんなが耳を傾けるんです。日本の釣り業界に足りないのは凄みです。凄みがないからプロへのリスペクトが損なわれていて、何でもない人のYouTubeチャンネルを鵜呑みにしてしまったり、このブログを読むハメになるんです(笑)
プロが威厳を取り戻すきっかけとなることを願っています。