AppleWatchの潮位アプリをサーフフィッシングで使う

釣りの道具といえばロッドにリール、それからルアーなどが主役と言ってよいものですが、大切な脇役としてサングラスや帽子、ライフジャケットにウェーダーなどもあります。人によってはGoProなども欠かせないでしょう。

私の場合は、フィールドの状況把握のために、双眼鏡などの望遠が利く道具と、スマホなどのデジタルデバイスの組み合わせが必要不可欠です。ただ、サーフでスマホを取り出して操作するのは不便でした。それが、2024年9月17日に提供されたAppleのwatchOS 11 で「潮位」アプリが登場したことで大きく改善しました。

この記事ではApple Watchの「潮位」アプリをサーフフィッシングで利用する事例をご紹介しようと思います。

まずはこれを見てくれ!

スマートウォッチに馴染みがない方にも手っ取り早く「便利さ」をお伝えしたいと思います。これはある日の私のApple Watchの画面です。クロノグラフのような文字盤をカスタマイズして私が知りたい情報を得られるようにしてあります。ここから読み取れるのは…

  • 雨が降っている(何分後に降る/止む などもわかる)
  • 気温は17℃
  • 北東の風3m/s
  • 北北西のうねり0.4m
  • 潮位0.3m 下げ潮

以上は「天気」アプリと「潮位」アプリをコンプリケーションに割り当てることで可能です。

すごいでしょ? 腕時計をサッと見るだけで情報収集できるんです。ではこの情報をどのように活用するかというところを次項で詳しく解説します。

「潮位」でわかること

コンプリケーションをタップすると割り当てのアプリへ画面遷移します。「潮位」アプリの画面は以下のもの。

一目でこの先の潮位の変化がわかりますね。この「潮位」で表示できるのは本日を含めた7日間先までの予報です。なお、リソースは国土交通省のナウファスとのこと。地点名の「西海岸」というのは「新潟西海岸」のことなのでナウファスの観測点からはわずかに離れていますが予報には満足しています。

潮位を示す数値については、当初は基準がわからなくて戸惑いました。どうやら直近の期間で最も潮位が低い時点が0.1mと表示されるみたいです。つまり、マイナスになることはないので直観的に捉えてよいです。

上図は「12:11現在で0.3m」「潮位下降中」「15:34に干潮となって0.3mの予報」という意味です。0.3mから0.3mになるということは潮位変化量が10cm未満だということです。日本海は潮位変化が少ないのでメートル表記だと物足りないですね。(ちなみに「言語」を「English」に切り替えてもft表記になりませんでした。)

うねりに注目

情報表示部分をタップすると詳細を読むことができます。

サーフに打ち寄せている波は「うねり」です。ザザーン、ザザーン、というあの波の正体です。それと、私たちが普段から見ている波にはもう1種類あって、風が強くて海面が波立っており、時には白波が見えるなんていうアレは「風浪」というものです。つまり、サーフで見えている波には2種類あるわけです。

「うねり」と目の前の「風浪」は向きが一致しないことがあります。なので、うねりの方向を確認しておくことは大切です。ちなみに新潟市中央区では、うねりは北か西のいずれかからしか入射しません。北西に位置する佐渡が外洋からのうねりをブロックしているからです。

この「うねり」がなぜ重要かというと、離岸流などのリップカレントを生じさせる主な要因だからです。上図では、北から高さ0.3mで周期5秒のうねりが入射していることを知らせています。新潟市の海岸は概ね北西を向いていますから、北からのうねりは斜めに入射すると理解できます。

これはサーフに立って見ると、海岸線のカスプ地形に対して、向かって右斜め前方からうねりが入り、ワンド形状の左側に水塊が集中し、頂点付近から左斜め前方へ離岸流が発生しやすいという予測を立てられます。

また、離岸堤が設置されている場合、うねりが離岸堤の間を抜けるときに回折という現象が起きます。簡単に言うと、離岸堤が波をブロックしたはずの内側のエリアにまで波が回り込んでくる現象のことです。この回り込む角度のことを回折角と呼び、うねりの周期が長いほど回折角は大きくなります。反対に、周期が短ければ直進性が高まるので、離岸堤の内側への回り込みが弱くなることと合わさって、離岸堤に向かっていく離岸流が発生しやすいと考えられます。

私は離岸堤のあるエリアで釣りをすることが多いので、「うねり」からリップカレントの予測を立てて、ベイトフィッシュが留まりそうな場所を想像しています。話が脱線しそうなので詳細は割愛しますが、「水温」と「気温」と、それから実際に手で触れた地表の温度や日照なども参考にして、リップカレントが表層を流れるのか、それとも深層を流れるのかも考えます。これはベイトフィッシュとなるカタクチイワシは表層におり、シロギスならば深層にいるからです。

風とか、方位とか

表層の海水の動きや、キャストに影響することとして、風向と風速もチェックします。

「天気」アプリが示す風速は陸上(市街地)の情報だったりするので、きちんと「潮位」アプリで確認しておくとよいです。

これも見方が微妙ですが、上段が平均風速、下段が最大風速ということのようです。サーフでのキャストを考慮するときは、高度20m~30mほども打ち上げることと対空時間も数秒間あるため最大風速のほうを参照しておくほうが無難です。

それからたびたび方位を気にしていますが、Apple Watchの「コンパス」アプリを使えば手首の上で確認できます。

なお、「コンパス」アプリについては(これも本題じゃないので)割愛しますが、作成したウェイポイントをグリッド上に表示する機能が面白いです。GPSを利用していますから、広大な砂浜の上でも、水中に立ち込んでいても、目印を置くことができます。「ココ目の前に投げると砂のサーフなのに根掛かりするんだよな」という場所をウェイポイントにしておくのも便利です。記憶を頼りになんとなく対応していたことを記録に基づいて実行できるようになるのが強みです。

おわりに

伝統的な登山では、地形図、天気図、コンパス、双眼鏡などを駆使して局所的な天候を予測する技術があります。これは生命に関わるという点でニーズが大きかったからに他なりませんが、そのような動機付けなどない街場であっても技術そのものは用いることができます。

釣りにおいては離岸流などを把握することは釣果を伸ばす秘訣であると多くのアングラーが信じています。しかし、そのわりには真剣に技術を検討していないのではないでしょうか? やはり命に関わることもあるサーファーのほうが、きちんと波を読んでいると思います。

今回の内容を書くことができたのは、様々な情報が手首の上に集まるようになった、ということが契機になっています。いくらスマホがあってもブラウザであっち見て、次はアプリでこっち見て、というのでは情報の一覧性が悪く、皆様に気軽に紹介できるような内容にはなりません。それがAppleのwatchOS 11で情報活用が一気に加速したと実感できたので、ようやく書くことができました。

依然として、得た情報をどのように活用するかというのは個人の技術が必要な部分ではあります。登山シーンの地図読みはそれ自体が楽しみとして確立しているので、釣りシーンでも同じような楽しみ方が定着してもいいんじゃないかなー、と思っています。