スケジュールと天候、気力と体力。これらが噛み合わず、釣りに行っていない。レジャーというのは難儀な趣味だと思う。こんなことを思うのは気力が落ちているからで、このまま釣りから遠ざかってしまわないように今回はコラムを書いてみる。
バークレイ研究所におけるバイト時間の比較実験結果
ワームを物色していれば一度は目にしたことがあるのではないだろうか。バークレイのパワーベイトのパッケージ裏面にはこのように書いてある。
- 1秒 ニオイなしワーム
- 3秒 他社ニオイ付きワーム
- 18秒 パワーベイト バイト時間は18倍!
バークレイ研究所には様々な魚種が飼育されており、実際に魚の反応を調べながら開発が行われているという。上記のバイト時間というのは、アクアリストとして魚を飼育したことのある人なら「その時、魚が何をしているのか」を想像できると思うのだが、飼育に関心のないアングラーにとっては文字通りの意味しか持たないかと思う。
そこで勝手ながら補足説明をしてみたいと思う。ただ、バークレイ研究所を見てきたわけではないので悪しからずご理解願いたい。あくまで魚の飼育経験から述べる。ちなみに私はアングラー歴よりもアクアリスト歴のほうが長い。
0秒 バイト以前の話
まずはバイトが発生する前の話が必要であると思う。アングラーの皆さんの語りを読むに、ショートバイトと(通常の、あるいは深い)バイトを1つの行動の延長線上と考えているようなフシが見受けられる。アクアリストとして言わせてもらうと、ショートバイトとバイトは全く異なる行動である。
バイトというのは捕食行動である。逃げる(あるいは逃げるであろう)ベイトを一撃で仕留める行動だ。これはターゲットを食べ物だと認識している時の行動である。
一方、ショートバイトというのは調査行動である。ターゲットを軽く口に咥えることで味覚と触覚を用いて調べているのだ。つまり、ショートバイトはルアーが食べ物ではないと気づかれているから起こる行動である。
1秒 ニオイなしワーム
ワームを口に咥えたがすぐに吐き出した場合、バイト時間は1秒ということになるだろう。この秒数がショートバイトとバイトのどちらであるかは、あまり問題ではない。1秒というのは魚が違和感を持ったことを意味している。これは食べ物ではない、というより、むしろ毒かも、ヤバいものを口にしてしまった、という反応が目に浮かぶ。
アングラーからすれば、あっ、いまアタった、と思って沸き立つかもしれないが、フッキングはしにくい。1回のバイトではベイトの全身は口に収まっていないことが多いのだ。だいたい2回から3回ほど吸い込みながら咥えなおして口の中に収める。だが、ここでいう「1秒ワーム」は1回目で吐き出されてしまうのでフックが口の中に入っていないことがある。
こういう時はルアーチェンジしたほうがいい。アクアリストの経験から言うと、危険と判断されたものへのバイトは2度と起こらない。つまり、スレるのである。調査行動としてのショートバイトは多くて3回程度。魚がルアーとコンタクトして5秒ほどの間にその個体は学習してしまう。
3秒 他社ニオイ付きワーム
もぐもぐ、ぺっ、という感じだ。食べ物としての信頼は得られていない。多くの魚種は複数のベイトを食べるが、常に色々なものを食べる人間のような雑食ではなく、その時に安全が確認できており、それでいて労せずに得られるものを食べ続ける傾向がある。アクアリストにとっては厄介な性質で、エサの銘柄が変わると拒食になったりする原因とも言える。
アングラーにとっては、高活性な魚をフッキングしていく場合には問題がない。フックさえ口に入ってしまえば、それ以上の長いバイト時間は必要ない。ただ、ワームがフリーになるリグの場合にはフッキングが遅れてしまうこともある。その場合には3秒は短い。
なお、もぐもぐ、ぺっ、という行動は、魚からすると食べ物への期待感がある。岩から千切れて海中を漂う海藻には小型のエビなどがしがみ付いていることがある。それを海藻ごと口に含んで、もぐもぐ、ぺっ、もぐもぐ、ぺっ、と繰り返すことがある。魚には手がないので、何かをほぐしたい時には口を手のように使うのだ。
魚にとっての結論は、「3秒ワーム」は食べ物ではない、ということだ。味がないか、素材が硬すぎるのが原因だろう。サーフゲームではジグヘッドワームのラインナップが多いが、それらのバイト時間は1秒から3秒と短く、スレさせやすい傾向にあると想像できる。
18秒 パワーベイト
完全にエサである。食感と味が最高なのだろう。18秒で吐き出したとしても、その原因は飲み込めなかったから一旦吐き出しただけで、すぐにまたバイトすると思う。10秒以上もバイトされていれば食べ物と認識されているとみて間違いない。アタリを放っておくと飲み込まれてしまう。
このようなワームは低水温・低活性な状況でも釣果を期待できると思う。釣り餌のゴカイやミミズが低温保存されて売られているのでお分かりの通り、彼らは低温だと活性が下がり、ほとんど動かなくなる。だから同じ状況でワームを使う場合にはアクションは無用になり、ステイ時間を長くするほうが自然な誘いになる。しかし、このような状況では魚も急いでバイトする必要がないので様子見の時間が長くなる。ニオイと味と食感が重要になってくる。
おわりに
特に結論があるわけではない。私はパワーベイトやガルプを使うことが多いが、ニオイの強いワームは保管や取り付けに難点があることは否めない。釣行時間が残り10分という状況でフレッシュな(臭い)ニオイ付きワームを使うのは躊躇ってしまう。ローテーションや交換も億劫である。それでも釣果を優先するのであれば信頼できる選択肢だ。これを投げてダメなら魚はいなかったと諦めがつく。
次の釣行ではワームを投げたくなったな! おわり。